2014koho07
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■近岡先生の思い出佐藤 私は、戦後すぐに先生に師事しました。先生の絵が持つ「距離感」には目を見張りました。遠近法を使っているわけではないのに、遠くの空は遠くに感じることにとても感動しました。 先生からは叱られてばかりでしたが、私が展覧会の出品審査に落ちたとき、「君より下手な人がいっぱい入ってる。心配するな」との言葉をかけていただきました。しかしその後、出品できるようになると、「何だ君の絵は。全然よくない」とも指導され、このことがとても印象に残っています。半田 「百周年」という文字を見ると、先生の偉大さを実感します。百年たってなお輝き続ける人はそうはいません。また、ふるさとへの思いがとても強い人でした。上村 昔からたくさんの絵を見てきましたが、先生の絵からは、深い精神性に裏打ちされた「温もり」を感じます。また、先生が始めた最上学童展は、今年で六十六回目ですが、県内でこれほど続く展覧会はありません。子どもたちの目標であり続けているのも素晴らしいですね。高橋 私はこの度、地元新聞で先生の特集記事を書きました。偶然でしたが、今年、生誕百年の記念の年と聞いて驚きました。今回の取材で思い出したことが二つあります。一つは、先生の描いた新庄の洋館として有名な「小野銃砲店」の前を通って通学していたこと。もう一つは、先生が、私の実家の向かいにあった「楠医院」を描いていたと、母が自慢げに話していたこと。今回その作品を初めて見ることができ、とても感慨深いです。■新しい技法へのチャレンジ半田 先生は、ペンで描いた水彩画も多く描いています。ドイツ製の、乾くとインクが水でにじまないペンを愛用していました。こんな描き方もあるのだなぁと思ったものです。この技法は近岡先生の独自のものと思いますが、先生の絵「明治の西洋館シリーズ」があれほど鮮明で、人の心を打つ作品となったのは、ペンを使って描いたことも理由なのではないでしょうか。佐藤 先生のペンは、先がすり減って無くなっていましたね。半田 あれだけたくさん描けば減るのも当然と思います。とにかく、ペンで描いてさっと色をつけるという技法には驚かされました。佐藤 新しい技法といえば、絵の具の代わりに漆を使ったり、絵の具に何かを混ぜて描いていたことを思い出します。あるとき、雪を混ぜた絵の具で雪の道を描いていました。なぜ入れるのか聞くと、「雪景色だから」ととぼけていましたが、あとから見ると、雪だけ溶けて立体的な表現となり、雪道らしくなっていて驚きました。「迷子」という作品では、砂を混ぜた絵の具を使っています。ほかの絵描きには見られない、飽くなきチャレンジ精神を感じました。我が近岡善次郎故郷への温かなまなざしとモダンの追求先月号でその功績などを紹介した、当市名誉市民の近岡善次郎画伯。今月号では、その教えを直接受けたり、影響を受けた方々に思い出などを語っていただきました。6

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