2017koho06
14/20

地域医療の今を語る   〜地域医療における在宅医療〜土田医院長土田秀也 氏昭和61年山形大学医学部卒業。東北中央病院、県立新庄病院で医師を務め、平成8年に土田医院を開設。 地域医療を支える医師の一人である土田医院長の土田秀也氏にお話を伺いました。施設・個人に関わらず土田医院では在宅医療(訪問診療)を週4日(月、火、木、金曜日)行っています。三條典男医師に引き続き地域医療について、医師の目線で地域医療の現状を語ってもらいます。在宅医療とは 本人にとっては人生を振り返る場所。これまで関わってきた人やモノ、空気と触れながら人生を肯定的に捉える。家族や周囲の人にとっては人生を考える機会。安らかに眠っている姿を前にすると、先の不安よりも「今を一生懸命生きればそれでいい」という覚悟が生まれる。かけがえのない場所と機会を提供することが在宅医療の使命です。SECONDOPINION――地域医療の現状は? 自宅での在宅医療という観点からお話をすると、昔に比べて、在宅医療を受ける方が減少して、施設で生活を送る方が増えてきています。お子さんが離れて生活していたり、働きにでていたりする方が多いことが原因だと思います。――そのことが何か問題に? 施設の種類によっては、看取りができないことがあります。そういった施設では、食事ができなくなってしまった人などは、いつどうなるかわからないので、入院させるしか方法がありません。病院でも点滴を打つだけになります。在宅医療での往診と、点滴だけの入院との医療費の差額は少なくみても100万円です。個人の支出面で見ても、地域の医療費負担の面で見ても、在宅医療を選んでもらった方が良いと思っています。――在宅医療は医師の方々が大変なように見えるのですが… 訪問看護ステーションや看取りを行っている施設などでは、患者がどういう状況のときに主治医を呼ぶべきなのかの判断が的確になってきています。そのためか、医師が夜中に不用意に呼ばれることも減りました。看取り可能な施設も増えてきていますし、在宅医療における医師の負担が大きいという世間のイメージと違って、現状ではそれほど大変という感じではないです。むしろ、入院患者が増えることで、病院の医療スタッフの負担が増えることの方が地域医療としては問題だと思います。――それでも何かあったときのために入院の方が安心に思えるのですが… 在宅医療は医師が常についているわけではないですし、家族を看取る機会は何度もあることではないので、不安から入院を選ぶ方が多いのはわかります。 しかし、入院は社会から一時的に離れてしまうので、社会の最小単位である家族からも離れてしまうことになります。その不安や辛さが症状としてでる人もいます。やはり、家族と話したり、晩酌したり、ペットと遊んだり、日常的に楽しんでいたことが身近にある安心感は大きいと思います。――在宅医療今後どうなっていきますか? 今後は全国的に病床数が減っていきます。ゆえに、在宅医療の必要性は上がるかもしれませんが、それはあくまで都会の話です。田舎に限っては人も減っているので、病床数不足によって在宅医療を勧めるということはありません。しかし、田舎での生活は全ての面で人生に結びついています。家族や地域との関わりを断ち切らないで最期まで過ごしてもらいたいという意味で、私は在宅医療を勧めたいです。――今後は在宅医療を選択した方が良いのですか? 状況によって、入院が良いか在宅医療が良いかは違ってくると思います。したがって、在宅医療はあくまで選択肢の一つに取り入れてもらえればと思います。入院しか方法がないわけではなく、選択することができることをわかってもらえれば幸いです。14

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 14

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です