2019koho08
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特集 伝統工芸を紡ぐ者たちしています。涌井:色で言うと、東山焼も釉うわぐすり薬で青色(なまこ色)以外にもさまざまな色の東山焼を作ることができます。その釉うわぐすり薬の配合を変えて、新しい色に挑戦したり、店頭配置でカラフルな作品を並べたりしました。阿部:色や柄、もちろん形状もそうですが、自分の好みを探すことができるのって楽しいですよね。涌井:小さい頃に流行った「たまごっち」などで、色を選ぶ楽しさを経験したのが影響してるのかもしれません。―――時代や世代の経験が伝統にも反映されているわけですね。その伝統が「今」求められていることはどんなことだと思いますか?涌井:各地域には「○○町といえばコレ!」という代名詞みたいなものがありますよね。新庄で当てはまるのは「新庄まつり」だと思います。代名詞があることは良いことなんですが、それだけしかないと思われるのは良くないと思うんです。伝統に求められていることというよりも、新庄に必要なものとして、代名詞が軸になりつつ「ほかにも色々あるんだよ」って思ってもらえる伝統でありたいです。阿部:伝統には伝統にしか持つことのできない重みとか誇りみたいなものがあると思うんです。それが絶えず続いていくように、間があかない露出の機会を作りたいです。そうして、新庄にはこんな素敵なものがあるんだよって話せるもの、周りに自慢できる伝統でありたいと思います。「新庄には何もない」って言ってほしくないので。―――伝統が伝統であるために、今後はどのように取り組んでいこうと思っているのか、その意気込みを聞いてもよろしいですか?涌井:ものづくりって、手作りでしか作れないものがあると思うんです。形のきれいさとか作りの精巧さでは計り知れない「想い」が宿った作品が手作りから生み出されるんです。そういった想いのこもった作品を生み出すために、伝統を守りながら、伝統が自身の制限になってしまわないように、縛られることなく作品づくりに楽しみを持ちながらやっていきたいです。阿部:新庄亀綾織の手触りと独自の風合いは機械で生産が不可能とされていて、手織りだから作り出すことのできるものです。機械化の波に負けないように、失敗を怖がらずに新しいことに挑戦しながら、この伝統を守っていきたいと思います。そうして、今の新庄の人たちはもちろん、未来の新庄人が自慢できる伝統であり続けることができるように、この素敵な伝統を後世につないでいきたいです。伝統=変わらないものではないから、新しいことへの挑戦を忘れない118

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