よく用いられている屋根雪処理には次の4つの方式があります (深沢、1986;篠島・佐藤、1987;沼野、1988;木村、1989)。
- 耐雪方式
- 融雪方式
- 自然滑落方式
- 雪下ろし方式
- その他
下記に4つの屋根雪処理方式の特徴を示しました。屋根雪処理については、いまでも様々な改良が施されています。
4つの屋根雪処理法の特徴
方 式 | 耐 雪 | 融 雪 | 自然滑落 | 雪下ろし |
---|---|---|---|---|
長所 | 屋根雪処理からの解放 | 屋根雪処理からの解放 | 省エネルギー | 初期投資の削減 |
短所 | 初期投資の増額 | 設備投資、ランニングコスト | 落雪の危険性 | 人手の確保、下ろした雪の処理 |
条件 | 任意 | 任意 | 堆雪領域の確保 | 排雪あるいは堆雪領域の確保 |
耐雪方式
屋根雪最大荷重に耐えられるだけの丈夫な住宅にして屋根上に雪を載せておく方式です。
一般的には水平やMの字の形をした屋根構造をもっています(図)。多雪地ですと構造計算をしてそれだけ丈夫につくらなければならないので、建設時の経費はかさみます。
しかし、長い目で見ると屋根の雪下ろしや住宅周りの雪処理もほとんどする必要がないので、高齢者向きだといえましょう。雪樋は凍結防止のために建物の内側に設置します。
そのため、雨仕舞や地震対策に気を配ることが大切です。ですから、十分な実績のある工務店に依頼すべきです。
丈夫な建物としておき、屋根に雪を載せたままにしておく方式。そのため雨仕舞には十分注意する必要があります。
耐雪方式とした場合の1冬の屋根雪荷重の推移を試算した結果です。
ただしこれは、1985年・1986年冬の新庄に当てはめた場合です。屋根雪荷重は最大で3月5日の610キログラム/平方メートルであるが、かなり大きく設定した耐雪荷重750キログラム/平方メートルを超えていないので、この冬は屋根雪処理は全く不要となっています。
融雪方式
屋根雪を融解させて雪荷重を軽減する方式です(図)。 この方式だけが他の方式と違ってランニングコストがかかります。
融解する熱源には石油ボイラー、電気、地下水、太陽エネルギーなどがあります(十日町市、1991年)。
石油を使うのが最も普及しています。電気は料金の安い夜間電力を有効に利用します。太陽エネルギーはまだ部分的に使われている程度です。
北陸地方の豪雪地である十日町市の場合でも、住宅の耐雪荷重を400キログラム/平方メートル、融雪能力を86W/平方メートル(ただし融雪効率を90%とした場合)とすれば、過去30年間の最大の豪雪時にも耐えられることが分かっています(木村、1997年)。
いずれにしても、均等に解かして屋根雪底部に空洞ができないようにしないと、融雪効率が低下します。また、全部の屋根雪を解かしきる必要はなく、むしろ少し残すくらいのほうが融雪効率は上がります。

雪方式とした場合の1冬の屋根雪荷重の推移を試算した結果です。
ただしこれは、1985年・1986年冬の新庄に当てはめた場合です。屋根雪荷重は最大でも130キログラム/平方メートルであり、融雪能力30W/平方メートルと少な目にしても耐雪荷重の300キログラム/平方メートルを十分下回っています(ただし、何のトラブルもなく経過した場合)。
自然滑落方式
傾斜した屋根にして雪を自然に滑落させて雪荷重を軽減する方式です。
省エネルギーという観点で優れています。ただ、軒下に落ちた屋根雪の堆積スペースを確保する必要があります。
また、2階建ての屋根の場合は、屋根雪が落ちるときに庇から大きく飛び出すことがあるので注意する必要があります(図)。
隣家や道路に落雪する恐れがある場合はフェンスなどでくい止める必要があります。落雪の下敷きになって生命を無くす事故があとを絶ちません。真冬日(最高気温が氷点下の日)が続くと、屋根雪が凍着してなかなか滑落しません。気温が 2℃になれば大抵滑落するという観察例があります(中村、1977年)。
なお、最近は雪の滑りやすい屋根材料が開発されています。

平屋の場合(左)は、庇の直ぐ下に落雪するものがほとんどです(中村、1978年)。その代わり窓ガラスに雪囲いが必要です。一方、2階建ての場合(右)は、屋根雪がかなり遠くまで飛び出す危険性があります。ここでの計算結果は最悪のケースを考えた場合です。各図をクリックすると、拡大図が表示されますので、是非ご覧ください。
自然滑落方式とした場合の1冬の屋根雪荷重の推移を試算した結果です。
ただしこれは、1985年・1986年冬の新庄に当てはめた場合です。屋根雪荷重は最大でも180キログラム/平方メートルであり、この冬は耐雪荷重の300キログラム/平方メートルを下回っています。
雪下ろし方式
古来から行われてきたもので、人力により屋根雪を除いてやって雪荷重を軽減させる方式です(写真2)。
除雪用具の変遷によって、こすきからシャベル、スノーダンプと大型化し、一度に大量の雪を能率良く処理できるようになりました(積雪会雪処理技術調査会委員会、1989年)。
しかし、それだけに、一歩足を踏み外すと大事故になりかねません。高床式の2階建てともなると、屋根に上がったときの恐怖感は相当なものです。
まず雪下ろしをしなくとも済むような配置を考え、やむを得ないときは、あらかじめ命綱を固定するためのフックを配備しておきます。雪下ろしは余裕をもって早めにするのが、昔からの知恵です

雪下ろし方式とした場合の1冬の屋根雪荷重の推移を試算した結果です。 ただしこれは、1985年・1986年冬の新庄に当てはめた場合です。屋根雪荷重が200キログラム/平方メートル超えた日に雪下ろしを行うものとしたので、この冬は2回の雪下ろしをする必要がありました。
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